親御様の医療の仕事を、お子様の進路の答えにしないための5つの問い

教える前に、見立てる。
答えを渡す前に、問う。

診療や勤務のなかで、日々さまざまな判断を重ねている医師・歯科医師の親御様へ。お子様に仕事の話をするとき、「自分の経験が、お子様の将来の答えになってしまわないだろうか」と感じることはありませんか。

親御様の仕事は、お子様にとって身近で大切な学びの材料です。ただし渡したいのは、進路の結論ではありません。働くときに何を大切にしているかを、お子様が自分で考えるための問いとして手渡すことです。

診療や職場の話を、憧れへの誘導にしない

お子様が親御様の仕事に関心を持つことは、自然なことです。けれども、職業の大変さや魅力を一方的に伝えるだけでは、お子様が自分の感じ方を言葉にする余白が小さくなることがあります。

仕事の話は、「こうなってほしい」を伝える場ではなく、「どんな働き方があるのだろう」「自分は何に心が動くのだろう」と考える入口にできます。個別の診療情報や、特定の方が分かる内容には触れず、親御様が普段大切にしている姿勢を一般的な言葉で話すだけで十分です。

親御様が渡せる五つの問い

1|今日、仕事で大切だと思ったことは何だった?

出来事の詳しさではなく、親御様の価値観を短く伝える問いです。「よく見て確かめることを大切にしたよ」のように、考え方だけを言葉にします。

2|人の話を聞くとき、何を意識している?

医療の仕事に限らず、人と関わる場面で大切にしていることを、お子様の学びへつなげます。答えを急がずに聞く姿勢そのものが、家庭での会話の見本になります。

3|分からないことに出会ったら、どう確かめる?

「分からない」を恥ずかしいものにせず、調べる、相談する、考え直すという次の一歩へ変える見方を渡せます。これは、お子様が勉強で止まったときにも役立ちます。

4|今、もっと知りたい仕事のことはある?

親御様が説明を増やす前に、お子様の関心を聞いてみます。答えがなければ、そのままで構いません。関心は、時間をかけて言葉になることがあります。

5|その話から、自分の学びで試してみたいことはある?

将来の職業の話を、今日の学びへ戻す問いです。観察する、理由を考える、分からないことを調べる。お子様自身が小さな一歩を選べるようにします。

「学びの問診」は、診断や評価ではありません

この連載でいう「学びの問診」は、お子様を診断したり、できる・できないを評価したりするものではありません。どこまで分かるか、なぜそこで止まったか、次に何を確かめるかを、短い会話のなかで一緒に見立てる考え方です。

親御様の仕事観を渡すことも、お子様を同じ道へ向かわせるためではありません。お子様が、自分の興味と学び方を自分の言葉で選べるようにするためです。

今夜の一分チェック

「親御様の仕事で、知りたいことがあれば一つだけ教えて」と聞いてみてください。答えが出たら、まずは評価せずに受け取ります。

お子様が答えたくないときは、そこで会話を終えます。理由を求めたり、答えを待たせたりせず、「また話したくなったら教えて」と伝えてください。別の日に、お子様から開き直せる余白を残すことも、学びを支える大切な関わりです。

見過ごすと、何が止まりやすいか

仕事の話が親御様からの一方通行になると、お子様は迷いや疑問を言葉にしにくくなることがあります。すると、興味を深めるための「もっと知りたい」や、勉強で困ったときの「ここが分からない」も出しにくくなります。

短い問いと、待つ時間を置くこと。そこから、お子様は将来のことも日々の学習も、自分の考えとして少しずつ整理していけます。

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このシリーズの入口

医師・歯科医師の親御様のための「学びの問診」と全9話の案内は、シリーズ入口ページにまとめています。